“歴史は勝利した者の記録だ。”
90%程度は正しい言葉です。勝利した者の記録だけを残し、歴史家はその記録を通してのみ過去にアプローチできるのですから…。
人類歴史の大部分の期間、支配層だけが文字記録を残すことができました。ですから被支配層に関する事実すらも、支配層の記録を通してしかアプローチできませんでした。そのため歴史は、被支配層が日常的に味わった悔しさや苦痛、彼らの意思や希望はほとんど、あるいは全く、盛り込むことができませんでした。
帝国主義時代、ヨーロッパの人々は、ヨーロッパだけが歴史を持つ文明の空間であり、残りは歴史のない野蛮な空間として扱いました。彼らは「歴史のない空間」を研究するために「人類学」という学問分野を作り、「歴史のない空間」の歴史を代筆しました。そのためアラブ人の思考が抜けたアラブ史、アフリカ人の声が聞こえないアフリカ史が生まれました。
第2次大戦とホロコーストという「真の野蛮」を経験した後、世界の知性は「弱者と敗北者の声が排除された歴史」がいかに危険なのかに気づきました。ドイツ人も、ヒトラーの声だけでなくユダヤ人の声にも耳を傾けていたら、ヒトラーの主張とユダヤ人の主張を「クロスチェック」していたら、あれほど簡単に「ファシズムの狂気」に飲み込まれなかったことでしょう。
その教訓を受け入れ、歴史家たちも歴史の声に耳を傾け、自分の記録を残せなかった人々の生を理解する努力をはじめました。「勝利した者の記録」まみれの史料の山から「敗北した者」の痕跡を追跡しようと努力しました。そうしなければ、歴史が「ファシズムの道具」に転落し得ることを悟ったからです。
KBSの法曹記者たち、いや韓国のすべてのマスコミの法曹記者たち、キム・ギョンロク氏(チョン・ギョンシム教授の資産管理人)のインタビュー内容の真偽を確認するために検察に連絡して「クロスチェック」したということ、方法論的に十分に理解します。しかしあなた方は、検察の主張を「クロスチェック」したことがどれだけありましたか? 被疑者の声すらも検察を通じて伝えたのではありませんか? 被疑者の悔しさは徹底して黙殺し、検察の代弁者の役くらいしか果たさなかったのではありませんか?
強者、勝利者、捜査機関の口を通じて弱者、敗北者、容疑者の声を選択的に聞き、大衆に伝えたことが、まさにマスコミが「ファシズムの道具」に転落した理由です。(われわれが)ファシズムですと? 今、“ファシズムマスコミ”の道を歩いているのはまさにあなた方です。
記事出典:보배드림