画像出典:etoday
インドネシアを国賓訪問中の文在寅大統領は9日、ジャカルタ市内のリッツカールトンホテルで開かれた韓・インドネシアビジネスフォーラムに参加し、基調講演で、東南アジア地域を互恵的な経済発展の橋頭堡にするという「新南方政策構想」を初めて発表しました。
以下にその内容の全文を日本語に訳してご紹介します。
全文和訳はこちらです↓↓
ロサン・ルスラニ(Rosan Roeslani)インドネシア商工会議所会長、パク・ヨンマン韓国商工会議所会長、両国の企業家と政治家の皆さん。
お会いできて嬉しいです。
インドネシアは、私が就任して初めて訪問するASEAN国家です。その上、私としては初めての国賓訪問です。今日は、ワクワクと弾むような心でこの場に立ちました。
皆さん、インドネシアと韓国の交流はいつから始まったのでしょうか?
両国が正式に国交を結んだのは1973年ですが、すでに600年以上前の朝鮮王朝時代にジャワ国の使者が二度、韓国を訪問したという記録が、歴史書に残されています。
ジャワ(Java)国王がインドネシアの特産物を贈り、朝鮮国王「太宗」が服や食べ物を与えて使者を厚くもてなしたそうです。政府レベルの使節団でしたから、おそらく民間の交流は、これより遥かに古くから行われていたのではないかと思います。
私の今回の訪問が、遠く海を渡ってきた先祖を讃え、私たちの長い友情と親善を確認しつつ、共同繁栄の未来を約束する時間となるよう願います。
両国企業家の皆さん。
インドネシアと韓国はすでに大切な友人です。インドネシアは韓国初の海外投資対象国であり、最初の海外油田共同開発国であり、プラント輸出国第1号です。
また、2006年に「戦略的パートナー関係」を結んで以来、2010年には「インドネシア経済開発マスタープラン」のパートナーに韓国が選ばれるなど、活発な経済協力を推進してきました。
しかし私たちは、共にもっと遠くまで行かなければなりません。私は、両国が共により大きな夢を見、より大きなチャレンジを始めることを提案します。両国間の貿易拡大というレベルを超え、ASEANと世界市場を共に開拓するパートナーとなることを提案します。
この目的のため、私と韓国政府が準備した「6つの重点協力課題」についてお話ししたいと思います。
第一に、両国間の経済協力の枠組みを復元し、活性化します。
まず、韓・インドネシア経済協力委員会、韓・インドネシア中小企業共同委員会など、両国の閣僚が参加する経済協議体を発展的に再編します。両国の経済省庁間で大臣・次官クラスの交流を活性化します。
経済協力の推進状況を定期的に点検し、両国の協力範囲を拡大します。今日の午後、両国首脳が同席して締結することになっている自動車などの「産業協力MOU」、「交通協力MOU」、「保健医療協力MOU」がその第一歩となるでしょう。
第二に、経済協力の分野を多角化します。
これまでの製造業と資源開発という分野を超え、第4次産業革命・防衛産業・環境産業・交通・保健など、未来戦略分野へと拡大していくことを希望します。
特に防衛産業分野では、次世代戦闘機共同開発事業(KFX/IFX)の推進、潜水艦の建造など、両国経済協力の新たな扉を開きます。
交通インフラにおける韓国の優れた技術力をインドネシアに伝授し、保健医療政策や医療技術分野においても、新たな協力関係を結んでいきます。
平昌冬季オリンピックは、両国のICT分野における協力の新たな転機となるでしょう。韓国が平昌オリンピックで試験運用する世界初の5G移動通信技術を、来年ジャカルタで開かれるアジア大会でサポートします。
第三に、基幹産業分野の協力を強化します。
韓国企業の投資が軽工業から重化学工業へと拡大されていますが、より速度を上げていきます。 現在、韓国のポスコとインドネシア国営のクラカタウ・スチールが合同で進めている製鉄所の増設と、ロッテケミカルの石油化学プラント建設がその良い例です。
特に協力を強化したい分野は、自動車産業です。韓国は世界第5位の自動車生産国です。世界でも最高水準の価格・品質競争力と優れた部品ネットワークを保有しています。インドネシア政府が、アセアン最大の自動車生産・輸出国を目指すという、野心満々のビジョンを推進していることを承知しています。韓国が最適のパートナーであると、自信を持って申し上げます。
今回の歴訪をきっかけに、両国政府が自動車産業における協力強化のための協議を始め、全面的な協力関係を構築するよう希望します。
第四に、人間中心の経済協力を拡大していきます。
ジョコ・ウィドト大統領は、就任後、低所得住宅地の改善、発電所の増設など、国民の暮らしの質を高める政策を推進しています。韓国政府は、これに積極的に協力していきます。
すでに両国は、チレボン1発電所のようないくつかの発電事業を成功裏に推進しています。韓国が参加した発電所は、インドネシアで最も効率が高く、故障が少ないと評価されています。
島嶼地域の電力供給拡大のための「エネルギー自立島」モデル事業など、新・再生可能エネルギー分野での協力も進められています。軽電鉄・庶民住宅・上下水道は、国民の暮らしに直結する分野です。これらの分野の協力も強化していきます。
第五に、両国の中小・中堅企業協力事業に対する支援を拡大します。
両国間の経済協力が長期的に拡大発展するためには、大企業のみならず、中小・中堅企業が協力の主体にならなければなりません。韓国はすでに、生産現場における隘路技術指導(TASK)事業を通じ、韓国の産業技術をインドネシアの中小企業に伝授する協力を始めています。
これを更に強化し、中小企業の経済協力をサポートする支援機関の予算ならびに人員規模も拡大していきます。併せて、中小企業の通関ならびに物流コストを削減するため、両国間の通関簡素化協定を締結することも提案します。
第六に、交易品目の拡大を通じ、貿易規模をより大きくしていきます。
交易品目を、景気変動に敏感な化石燃料や基礎原材料から、着実に取引できる機械、素材・部品、消費財へと増大していきます。インドネシアが誇るパーム油や農産物など、エコ商品の交易も拡大していきます。
これにより、両国間の貿易額を2022年までに300億ドルレベルに拡大し、長期的には500億ドル以上を目標にしていきます。
両国企業家の皆さん。
韓国は、インドネシアとの協力に加え、ASEANとの交流・協力も画期的に強化しようと考えています。ASEANと韓国との関係を、朝鮮半島周辺4大国と同じレベルに引き上げることが私の目標です。
このため、韓国政府は、ASEANとの協力関係を画期的に発展させていくための新南方政策を強力に推進していきます。
商品取引中心の関係から、技術や文化・芸術、人的交流へと拡大していきます。交通・エネルギー・水資源管理・スマート情報通信など、ASEAN諸国に必ず必要な分野から協力を強化することができるでしょう。双方の国民の暮らしを結ぶ人的交流の活性化は、あらゆる協力を裏打ちする頑丈な基盤となります。
これにより、人と人、心と心がつながる「人(People)共同体」、安保協力を通じてアジアの平和に貢献する「平和(Peace)共同体」、互恵的な経済協力を通じて共に豊かに暮らす「共生繁栄(Prosperity)共同体」を共に創出していくことを希望します。
私は、ASEANとの協力をインドネシアから始めるようになったことを非常に嬉しく思います。ASEANと韓国の深い協力が、インドネシアと韓国の交流・協力を一層強化する促進剤となるでしょう。
両国企業家の皆さん。
今回の歴訪を準備しながら、両国が双子のように似ている点が多いことが分かり、改めて驚きました。 両国は、植民地の痛みを共に経験し、権威主義政府を経て民主化を達成しました。90年代のアジア経済危機と2000年代のグローバル金融危機も賢明に克服しました。 両国政府の経済政策も、同じ価値観と志向点を共有しています。
ジョコ・ウィドト政府が推進している低所得層支援と最低賃金引き上げ、地域均衡発展を通じた国民の暮らしの質の向上は、韓国の新政府が推進している「人中心の経済」とあまりにもよく似ています。
私とジョコ・ウィドト大統領には、多くの共通点があります。庶民の家庭に生まれ、貧しい暮らしを送りました。遅くに政界に入り、国民と意思疎通することを好みます。 私はこのような共通の歴史的経験と相互理解が、両国の共同繁栄のための頑丈な土台になると確信しています。
これまで両国関係の発展に力を尽くして来られた皆さんのご苦労に感謝しながら、今後も多くのご声援をお願いいたします。皆さんのご健康と成功をお祈りします。 ありがとうございました。テリマカシー!