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文在寅大統領がシンガポール国賓訪問最終日の13日午前(現地時間)、オーチャードホテルのグランドボールルームで開かれた「シンガポールレクチャー」で演説を行いました。
「シンガポールレクチャー」は、「シンガポール東南アジア研究所」がシンガポール外務省の後援を受け、自国を訪問する首脳クラスの人物を招いて講演を聞く世界的権威の行事です。
以下、この演説の全文を日本語に訳してご紹介します。
↓↓全文和訳はこちらです。
<シンガポールレクチャー講演全文>
尊敬するシンガポール国民の皆さん。
内外貴賓の皆さん。
米朝首脳会談は平和の道を明るく照らしました。
はじめに、世紀的会談が成功裏に開催されるよう支援してくださったシンガポール国民と政府に感謝いたします。
シンガポールはアジア研究において世界最高であり、これによってアジアの価値を牽引しています。シンガポールレクチャーにお招きくださった東南アジア研究所に格別の友情を感じます。
昨年、フィリピンのマニラでリー・シェンロン首相にお会いしました。
私たちは、早期に相互訪問することを約束しました。
楽しみにしていた出会いが実現し、非常に嬉しいです。
シンガポール国民の皆さん。
シンガポールはすなわち平和です。
平和に言及することなくシンガポールについて語ることはできません。
小さな漁村から始まったシンガポールの歴史は、平和を成し遂げつつ繁栄に至りました。
冷戦とkonfrontasi(対決)により反目していた時期、シンガポールはASEAN創設を主導して対話をリードしました。
「ASEAN中心」という価値を打ち立て、ASEAN+3、東アジアサミット(EAS)を通じてASEANの外延を拡大するのに大きく寄与しました。
東南アジアが平和を維持することのできた背景にはASEANがありました。
地域協力という第三の道を開拓しながら、地域の安定を維持しました。とりわけシンガポールは、一番先頭に立って平和を推進しました。
東南アジアは世界で最も多様な地域です。イスラム教と仏教、キリスト教とヒンズー教、道教と儒教、そして社会主義が共に暮らしています。
ASEANはこのように、さまざまな文明が平和的に共存できるということを実践的に示しました。
今、シンガポールがASEANと共に達成した平和は、ASEANを超え、世界が注目するようになりました。
21世紀を平和と共存の世紀と呼ぶことができるなら、21世紀はASEANの世紀ということができるでしょう。私はその中心にシンガポールがあると思います。
韓国もまた、他の誰よりも平和を望んでいます。
韓国ほど平和が切実な国はありません。
戦争ですべてを失い、いつも戦争の脅威に苦しみ、多くの痛みに耐えてきました。
私もまた、暮らしの基盤を後に手ぶらで避難船に乗り込んだ戦争避難民の息子として、平和がいかに重要であるかをよく知っています。
平和を目指すシンガポールの一貫した努力が、ここを米朝首脳会談の場所にしました。
平和を成し遂げてきたシンガポール国民の支持があったからこそ、米朝首脳会談が成功したと思います。
平和に向けたASEANとシンガポールの努力に敬意を表し、平和を通じ、私たちすべてがより大きな繁栄に向かって共に進んで行こうと申し上げます。
シンガポール国民の皆さん。
内外貴賓の皆さん。
韓国にとってASEANは、平和共同体を共に作り上げていく仲間です。
共に経済発展を成し遂げる貿易パートナーであり、投資対象国です。
今では隣国を超え、家族のような関係に発展しています。
私はASEANの重要性を認識し、ASEANと共に未来を切り開くために努力してきました。
昨年5月の就任直後、ASEANに歴代初の特使を派遣して、ASEANとの関係をより緊密にしようとしました。
9月には、私の故郷である釜山に、ASEANの対話相手国の中で初めてアセアン文化院を建立しました。
11月にはベトナム、インドネシア、フィリピンを訪問し、「新南方政策」を宣言しました。
今年3月にはベトナムを再訪問し、チャン・ダイ・クアン主席と共に、域内平和の増進と共生繁栄のための実質的な協力を強化することで合意しました。
ここに来る直前、インドのモディ首相とも、域内多国間協議体におけるより緊密な協力と未来志向的協力を約束しました。
シンガポールと韓国は、1975年の国交正常化以来、自由で開放された経済、域内の平和と安定という共通の志向点を持って、共に協力してきました。
両国はどちらも、植民地から独立した後、数多くの課題を克服しました。
両国とも天然資源がありませんが、「人」を希望とし、人材を育成しました。
国民の力で「赤道の奇跡」と「漢江の奇跡」と呼ばれる驚異的な経済成長を遂げました。
昨日、リー・シェンロン首相と私は、シンガポールと韓国の関係を一段と発展させるための具体的な方案について合意しました。
人材育成のための交流が拡大されるでしょう。
国民に実質的な恩恵が行き届く経済協力が行われるでしょう。
韓国の企業はすでに、シンガポールの主要なランドマーク建設に積極的に参加してきました。
今後とも第4次産業革命時代に共に備え、域内平和と繁栄のための協力が一層緊密になるでしょう。
ASEANと韓国は、互いに足りないものを補い、互いに利得になる関係です。
平和と共同繁栄の未来を切り開く最適なパートナーといえます。
私は、ASEANとの関係を米国・中国・日本・ロシアといった朝鮮半島周辺の主要国レベルに格上げし、発展させていくという戦略的ビジョンを持っており、「新南方政策」を重点的に推進しています。
「新南方政策」は、シンガポールを含む東南アジア諸国と「人、共生繁栄、平和のための未来のパートナーシップ」を構築するものです。
もっと多くもっと頻繁に人々が出会い、実質的協力を通じて共生繁栄の機会を広げ、朝鮮半島とASEANを超え、世界平和に共に寄与しようとするものです。
シンガポールは、今年度のASEAN議長国としてASEANの平和と繁栄をリードしており、韓国の「新南方政策」の中核的なパートナーです。
シンガポールの積極的な支援により、ASEANと韓国の関係がさらに深化発展することを期待します。
尊敬するシンガポール国民の皆さん。
シンガポールはアジアの「釣り合い重り」(バランスウェイト)であり、東西文明のるつぼです。
小さいながらも非常に大きな懐を持つ国です。
仏教の寺とヒンズー教の寺院、キリスト教の教会とイスラム教のモスク、道教の寺院が一つの街に融け合っており、およそ9千社の多国籍企業の会社員がこの街を闊歩しています。
多人種、多文化の和合と調和において世界最高です。
何よりも敬意を表さざるを得ないのは、理念の偏見がなく、理念に振り回されず、むしろ理念を作り上げていることです。
実力中心の実用を優先する社会であり、他のいかなる国よりも清廉です。
また、司法制度が最も公正に運営されています。
和合と調和を成し遂げたシンガポールの力は、まさにここに由来していると思います。
韓国は理念の対決に疲れ果て、長い間「過労病」を患ってきました。
南北分断は理念を前面に立てた腐敗と特権と不公正を容認し、そのお陰で多くの力を消耗しました。
そんな私たちとしては、本当に羨ましいことです。
しかし、韓国は今、公正で正義の叶う社会を作りつつあります。
この過程で、シンガポールに学ぶべき点が本当にたくさんあります。
シンガポールの「大胆に想像して大胆に実践する力」も、まさに実力と実用、清廉と公正から生まれると思います。
その力で世界の積み替え量の7分の1以上を処理し、コンテナの取扱量では世界第2位の港になりました。
シンガポールの次世代国家ビジョンである「スマートネーションプロジェクト」は、第4次産業革命に対する国家レベルの先制的対応です。
その革新プロジェクトの一つが自律走行タクシーです。
適切な公共交通によって環境と暮らしの質を高めるというシンガポールの目標は、自家用車を好む人の考えまで変えるでしょう。
シンガポールは、革新的な経済政策と社会政策によって、人類に新たな道を提示しています。
私は、シンガポールのチャレンジを見ながら、アジアの時代が開かれているという確信を持ちます。
私は、韓国もまた、大胆な想像力を実践できる国に作ろうと思います。
韓国には、シンガポールにはない、世界のどの国にもない、もう一つの機会があります。
まさに南北経済協力です。
南北首脳会談は、その始まりです。
ほんの昨年まで、誰もが夢だと思っていたことです。
韓国は、朝鮮半島の完全な非核化と平和を基盤とする、新たな経済地図を描くようになるでしょう。
南北は、経済共同体に向かって進んでいくでしょう。
誰もが自分の実力を公正に発揮できる国、平和の上に繁栄の花が咲き乱れる朝鮮半島を作っていきます。
朝鮮半島に平和が実現すれば、シンガポールやASEANと共に、アジアは世界で最も繁栄する地域になるでしょう。
人類の未来を照らす希望となるでしょう。
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シンガポール国民の皆さん。
南北の「板門店宣言」と米朝首脳会談の共同声明を通じ、南・北・米の首脳は歴史の方向を変えました。
朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和定着のための、自信に満ちた歩みを始めました。
私とトランプ大統領は、堅固な韓米同盟を土台に、北朝鮮の核問題を解決するという認識で一致しました。
このような共同認識の下に、韓米両国は、北朝鮮の平昌五輪参加、両国特使団の往来、南北首脳会談と米朝首脳会談に至る、「歴史的大転換」の全てのプロセスを共にしてきました。これからも共に進んでいくでしょう。
安倍首相とも、朝鮮半島の完全な非核化という共通目標のために、緊密なコミュニケーションならびに協力関係を構築してきました。
南北関係の正常化は米朝関係の正常化へと続き、日朝関係の正常化へとつながるでしょう。
日朝関係の正常化は、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定に大きく寄与するでしょう。
この目的のため、日本との協力にも最善を尽くしたいと思います。
先の5月に日本で開催された日中韓首脳会議で、日本と中国は、南北首脳会談が成功裏に開催されたことを祝い、板門店宣言の忠実な履行のための積極的な支持を表明しました。
昨年12月には北京を訪問し、習近平主席と朝鮮半島問題に関する突っ込んだ会話を交わしました。対話と交渉による北朝鮮核問題の平和的解決のため、緊密に協力しようという共同の立場を確認しました。
先月、ロシアで会ったプーチン大統領とは、南北ロの三角協力を準備することで合意し、朝鮮半島とユーラシアが共に平和と繁栄を享受できるよう、協力を強化していくことにしました。
私はこれまで金正恩委員長に二回会いました。
金正恩委員長は、理念の対決から抜け出し、北朝鮮を正常な国として発展させようという非常に強い意欲を持っていました。
金正恩委員長が非核化の約束を守るなら、自国を繁栄へと導くことができるでしょう。
決して平坦な道ではありませんが、首脳間の合意を真に履行していくなら、目標を達成することができるでしょう。
北朝鮮が非核化の履行案を更に具体化し、韓国と米国がこれに見合う包括的な措置を迅速に推進するなら、速度はより速まるでしょう。
韓国政府は、一日も早く平和体制が実現し、経済協力が開始されるよう努力するでしょう。
「板門店宣言」と「セントーサ合意」が、地球上の最後の冷戦を解体した合意として記録されるよう、国際社会と継続的に協力していきます。
シンガポール国民の皆さん。
内外貴賓の皆さん。
今まで支えてくださったように、シンガポールとASEANの建設的な役割を期待します。
ASEANと韓国はこれまで、域内の平和と安定のために、北朝鮮の核問題を平和的に解決し、朝鮮半島に平和体制を定着させる必要のあることに共感してきました。
特にASEANは、2000年以降、ASEAN地域安保フォーラム(ARF)を通じ、北朝鮮と国際社会との対話の場を設けてくれました。
ASEAN地域安保フォーラムは北朝鮮が参加する唯一の多国間会議であり、北朝鮮と国際社会がコミュニケーションをとることのできる重要な窓口となってくれました。
また、ASEANは一貫して、北朝鮮が核とミサイル開発を放棄し、平和と繁栄の道に戻るよう促してきました。
朝鮮半島の平和定着へと向かう旅で韓国とASEANが協力する道は、遠くにあるのではありません。
去る2月、平昌冬季オリンピックがそうであったように、来月インドネシアで開催されるアジア大会が、朝鮮半島の平和に貢献する和合の場となることを期待します。
韓国とASEANとの間に既に構築されている様々な協力と交流促進の枠組みの中に、北朝鮮を包容することが大切です。
北朝鮮が非核化の措置を誠実に実践していく場合、ASEANが運営している色々な会議体に北朝鮮を参加させ、北朝鮮との二国間交流協力が強化されることを願います。
北朝鮮が国際社会の責任ある一員として、自らの役割を果たせるような機会を作らなければなりません。
北朝鮮の核開発に対する国際社会の制裁が本格化する前に、ASEANは北朝鮮と互恵的な経済協力関係を結びました。
またASEANは、韓-アセアンFTAを通じ、開城工業団地の商品に韓国産と同じ関税特典を与えるようにして、南北間の経済協力をサポートしました。
北朝鮮の完全な非核化履行によって対北制裁が解除されれば、かつて活発だった北朝鮮とASEAN間の経済協力が再び活性化するでしょう。
北朝鮮とASEAN双方の経済発展に貢献することができるでしょう。
朝鮮半島の平和定着は、朝鮮半島を超え、ASEANと韓国、北朝鮮とユーラシアの経済を結ぶ接点となり、ASEANを含む域内諸国の新たな経済成長の原動力を作り上げるでしょう。
尊敬するシンガポール国民の皆さん。
内外貴賓の皆さん。
シンガポールが成し遂げた和合と調和は、21世紀の人類の理念です。
東と西、南半球と北半球、世界が出会う今、シンガポールはその交差点で溶鉱炉となっています。
アジアの火を照らしています。
私は、シンガポールが過去50年の成果を超え、もう一つの奇跡を作り上げることを確信します。
今までと同じようにASEANの平和と繁栄をリードしつつ、完全な非核化を通じた平和定着という朝鮮半島の目標にも、常に同参してくれることを信じます。
アジアの平和で
アジアの時代を開いていきましょう。
アジアの繁栄で
人類の希望を作り上げましょう。
ありがとうございました。