画像出典:news.naver.com
第73回国連総会に出席するためニューヨークを訪問中の文在寅大統領は、25日午後(現地時間)、CFR(米国外交協会)・KS(コリアソサエティー)・AS(アジアソサエティー)が共同主催する懇談会にて講演を行いました。 以下にその講演の全文を日本語に訳してご紹介します。
全文和訳はこちらです。↓↓
尊敬するリチャード・ハース(Richard Haass)会長、トーマス・ハバード(Thomas Hubbard)理事長、ジョセット・シーラン(Josette Sheeran)会長、内外貴賓の皆さん。
お会いできて嬉しいです。
国際関係分野の代表的な三機関が共同で懇談会を開き、ご招待いただきありがとうございます。三機関は、米国とアジア、韓国を結びつける「連結リンク」のような役割を果たしてくれています。特に、朝鮮半島問題に対する深い関心と愛情についていつも感謝しています。 最高のアジア・韓国専門家と共に急変する朝鮮半島情勢を共有し、平和と繁栄の朝鮮半島についてお伝えできることになり、非常に意義深く思います。
私が国連総会に初めて参加した昨年のこの時期、朝鮮半島をめぐる緊張は最高潮に達していました。北朝鮮は6回目の核実験を強行し、国連安全保障理事会は、歴代最高水準の対北朝鮮制裁案を決議しました。戦争の暗雲が朝鮮半島を覆いました。
私は切迫した心情で、北朝鮮と国際社会に対し、対話によって問題を解決しようと呼びかけました。北朝鮮には、核を放棄し、平和の道に出てくるよう促しました。2018年の平昌冬季オリンピックが平和のオリンピックになるよう、国際社会の支持と参加を要請しました。
当時ですら、多くの人々は実現の可能性を信じませんでした。空虚な話に聞こえたかもしれません。それから1年が過ぎた今、朝鮮半島に奇跡のようなことが起こっています。
平和の序幕は、今年2月の平昌冬季オリンピックでした。北朝鮮は、代表団と選手団を平昌に送りました。
4月27日、板門店で私と金正恩委員長との初の首脳会談を行いました。朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和体制構築のための板門店宣言を採択しました。
6月には、歴史的な米朝首脳会談が行われました。70年の敵対関係において初めてのことです。米国と北朝鮮の指導者間に相互信頼と尊重が形成された偉大な決断でした。
北朝鮮は核実験場を廃棄し、米軍の遺骨を送還し、9.9節の閲兵式では中・長距離ミサイルを動員しない誠意を見せてくれました。
先週、私は平壌にいました。
金正恩委員長と三回目の南北首脳会談を行い、「平壌共同宣言」を発表しました。
金委員長は、朝鮮半島を核兵器や核の脅威のない平和の地にすることを直接発表し、できるだけ早い時期に非核化を終え、経済発展に集中したい希望を明らかにしました。
北朝鮮は、昨年11月以降、核とミサイルによる挑発を中断しました。 国際社会が見守る中で豊渓里の核実験場も廃棄しました。
今回、北朝鮮は、非核化の迅速な進展のため、まず東倉里のエンジン試験場とミサイル発射台を関係国専門家の参観の下に永久に破棄することを確約しました。また、米朝首脳会談の合意精神に則り、米国が相応する措置をとった場合、寧辺の核施設の恒久的な廃棄を含む追加的な非核化措置を継続してとる用意があることを明らかにしました。検証可能で不可逆的な非核化を行うという意味です。
金委員長は、早急な非核化のため、ポンペオ国務長官の訪朝と第2回米朝首脳会談の早期開催を希望しています。
皆さん。
南と北の間でも、緊張の緩和と交流・協力が実践されています。
2週間前に南北共同連絡事務所が北朝鮮の開城に開設されました。 南北間に、24時間365日対話できる公式窓口ができました。
8月には、離散家族の再会が行われました。平昌五輪に続き、インドネシアのアジア競技大会では、いくつかの種目で南北単一チームが出場し、史上初の金メダルを獲得したりもしました。
何よりも重要な成果は、今回の「平壌共同宣言」に盛り込まれた軍事分野の合意です。南北は、朝鮮半島全体でお互いに対する敵対行為を停止することにしました。戦争の脅威をかなりの部分取り除いた、実質的な終戦措置です。
非武装地帯と共同警備区域を非武装化し、平和の象徴にしていきます。「戦争のない朝鮮半島」の実現に急速に近づいているわけです。
南北が追求する終戦宣言は、平和体制に進むために経なければならないプロセスです。北朝鮮の非核化措置を促進するためにも必要です。
国連や在韓米軍の地位に影響を与え得るという一部の懸念は、事実ではありません。 終戦宣言は平和協定に進むための政治的宣言であるため、平和協定が締結されるまで停戦体制が維持されます。
在韓米軍の駐留は、終戦宣言や平和協定とは無関係に、韓米同盟が決定する問題に過ぎません。これらの終戦宣言の概念については、金正恩委員長も同意しています。
わずか1年前には戦争の恐怖に怯えていた南と北、周辺諸国にとっては夢のようなことです。トランプ大統領の果敢な決断と中国・日本・ロシアをはじめとする国際社会の一貫した支持がなければ達成できないことでした。
昨日、トランプ大統領と私は、これら全ての問題を巡って虚心坦懐な対話を交わしました。 「セントーサ合意」と「板門店宣言」、「平壌共同宣言」の速やかな履行が何よりも重要である、との認識を共にしました。
トランプ大統領と金正恩委員長は、お互いに信頼し合っています。 中断されていた米朝間の非核化議論も、再び本格化するでしょう。
米韓両国は、北朝鮮の措置に応えました。戦略資産が展開される大規模な合同軍事訓練を中止しました。米朝の首脳が再び対座すれば、非核化の大きな進展があるものと期待します。
皆さん。
朝鮮半島の平和のための最も堅固な礎は韓米同盟です。血で結ばれた韓米同盟は、70年以上を経て一層強固となり、拡張されました。韓米同盟がなかったなら、大韓民国が半世紀の間に民主主義と経済発展を同時に達成することはできなかったでしょう。
最近平沢に移転した在韓米軍司令部のキャンプ・ハンフリーズは、韓米同盟の象徴です。 ニューヨークのセントラルパークの5倍に及ぶ規模です。海外にある米軍基地としては最大の規模と最高の施設を誇っています。 陸海空統合基地としてかつ作戦ハブとして、最高の運用能力を保有しています。 昨年、私と一緒にキャンプを訪問したトランプ大統領も、親指を立てました。
軍事同盟から始まった韓米同盟は今、経済同盟を超え、グローバルなパートナーシップへと拡張されています。
米韓FTAは、両国間の交流と経済協力に画期的な発展をもたらしました。世界1位と11位の経済大国間のFTAは堅固な同盟の結果であり、世界の自由貿易の触媒となりました。韓国は、世界最大の資本と技術力を持つ米国市場に進出することができ、米国は、東アジアの橋頭堡を確保しました。
昨日、両国間のFTA改定協定に署名しました。FTA改定により、両国国民が相互互恵的交易の恩恵を享受することを期待します。米国と韓国は、テロ・極端な暴力主義・環境と保健・飢餓・難民など、人類が直面している問題にも共に力を合わせていきます。
トランプ大統領は私に、「韓米同盟は単なる同盟ではなく、偉大な同盟だ」と言いました。 自由と民主主義は永遠です。 戦争で流した血によって結ばれた私たちの同盟は、必ず戦争を終わらせ、平和と繁栄へと続いていくでしょう。
すでに私たちの同盟は偉大です。しかし私は、朝鮮半島の平和構築を通じ、私たちの同盟がより一層偉大になるだろうことを信じます。
内外貴賓の皆さん。
朝鮮半島の平和は、域内安保に貢献するのみならず、朝鮮半島と北東アジアの同伴繁栄をもたらします。 完全な非核化と共に朝鮮半島に平和が定着すれば、南と北は、本格的に経済協力を推進するでしょう。
南北の経済共同体は、北東アジアの経済協力へと繋がるでしょう。条件が造成されれば、開城工業団地と金剛山観光を再開します。黄海経済特区と東海観光特区の開発計画も持っています。米国と韓国企業にとっては新たな成長のチャンスになるでしょう。
私は、先の8.15祝辞で、北東アジア6カ国と米国が共に参画する「東アジア鉄道共同体」を提案しました。 昨年は、ロシア東方経済フォーラムで、ロシアのエネルギースーパーリング構想とモンゴル・ゴビ砂漠の風力、太陽光を連携した、巨大な北東アジアスーパーグリッド構想も提案しました。
東アジア鉄道共同体は、エネルギー共同体や経済共同体を超え、多国間平和安保体制へと発展する基盤となるでしょう。平和が経済をリードし、経済が平和を守るでしょう。アメリカの参画は、北東アジアの発展を加速し、地域安定化への大きな力となるでしょう。この場を借り、アメリカの積極的な参画を提案します。
内外貴賓の皆さん、尊敬する国際関係専門家の皆さん。
南と北の国民は、互いに他人ではありません。私たちは、5000年を共に生きてきました。同じ血筋、同じ歴史、同じ言語、同じ文化を持っています。しばらく別れていた兄弟と同じです。
私たちは、戦争を経験して理念的に対立しましたが、私たちは一つという考えを忘れずにいます。戦争の脅威から脱した平和な朝鮮半島を共に願っています。南北8千万同胞の切実な思いと国際社会の支持が、今日、朝鮮半島の平和の奇跡を作っています。
私は、トランプ大統領、金正恩委員長と共に、朝鮮半島の平和と繁栄というビジョンを持ち、新たな未来に向かって大胆に進んでいくでしょう。
私は、トランプ大統領と金正恩委員長の誠実な意志と変わらない信頼を一度ならず何度も確認しました。私たちは共に、必ずやり遂げられると確信しています。朝鮮半島の平和と繁栄、新たな未来へと進む道に対し、皆さんの惜しみない支持と声援をお願いいたします。
ありがとうございました。