画像出典:ハンギョレ
文在寅大統領は26日(現地時間)、米ニューヨークの国連本部にて、第73回国連総会の一般討論演説を行いました。以下にその全文を日本語に訳してご紹介します。
全文和訳はこちらです↓↓
議長、事務総長、各国代表の皆さん。
アナン第7代国連事務総長のご逝去に深い哀悼の意を表します。世界は、平和の道に刻まれた彼の名前を永遠に記憶するでしょう。
マリア・エスピノサ国連総会議長の就任をお祝います。第73回総会を通し、地球のあちこちに国連の手が届くことを希望します。
また、グテーレス事務総長の素晴らしい指導力により、人類に貢献する国連としてさらなる発展を遂げることを願います。
私は、昨年に引き続き、再び切実な胸の高まりを覚えながらこの場に立ちました。
過去一年間、朝鮮半島には奇跡のようなことが起きました。史上初めて、北朝鮮の指導者が軍事境界線を越えて板門店に下ってきました。シンガポールのセントーサ島では、歴史的な米朝首脳会談が開かれました。
金正恩委員長と私は、戦争の影を取り払い、平和と繁栄の時代を約束しました。
米朝会談では、朝鮮半島の完全な非核化と敵対関係の清算、恒久的な平和体制の構築に努力することで合意しました。トランプ大統領と金正恩委員長は、平和を願う世界の人々に感動と希望を与えました。北朝鮮は、国際社会が見守る中で豊渓里核実験場を廃棄し、米国と韓国は大規模な軍事訓練を中止して、信頼を構築しました。
朝鮮半島と米朝関係の新たな時代を切り拓いているトランプ大統領と金正恩委員長の勇気と決断に、敬意と感謝の意を表します。
先週、私は平壌にて、三度目となる金正恩委員長との出会いを果たし、朝鮮半島を核兵器や核の脅威のない平和の地とすることに改めて合意しました。金委員長は、できるだけ早い時期に非核化を終え、経済発展に集中したいという希望を明かしました。
また、非核化の早急な進展のため、まず東倉里のエンジン試験場とミサイル発射台を国際的な参観の下に永久に廃棄することを確約しました。
さらには、米朝首脳会談の合意精神に則り、アメリカが相応な措置をとるなら、寧辺の核施設の恒久的な廃棄を含む追加的な非核化措置を継続してとる用意があることを明言しました。
朝鮮半島は65年間、休戦状態にあります。戦争の終結は非常に切実です。平和体制に進むために必ず経なければならないプロセスです。今後、非核化のための果敢な措置が関係諸国の間で実行され、終戦宣言へと繋がっていくことを期待します。
困難が伴ったとしても、韓国・北朝鮮・アメリカは、首脳間の相互信頼に基づき、一歩ずつ平和に近づいていくでしょう。
これらの劇的な変化は、平和を願う世界の人々の支持と応援のおかげです。特に国連は、北朝鮮に平和へと進む勇気を与えました。国連の役割に感謝の意を表します。
しかし、始まりです。
完全な非核化と恒久平和のための旅に対し、国連加盟諸国の継続的な支持と協力をお願いします。韓国は国連が採択した決議を守りながら、北朝鮮が国際社会の一員として共に行動していけるよう、誠の限りを尽くすでしょう。
議長。
先の冬、江原道平昌にて朝鮮半島の平和の序幕が切って落とされました。2017年11月に国連総会が採択した「オリンピック休戦決議」が貴重な実を結んだ瞬間でした。
グテーレス事務総長と世界各国の首脳が北朝鮮選手団の参加を祝ってくれました。朝鮮半島の和合と平和を祈ってくれました。世界は、平和の新しい歴史を予感することができました。 平昌冬季オリンピックに北朝鮮が参加できるよう道を開いてくださった、バッハIOC委員長のリーダーシップと貢献に重ねて感謝いたします。
平昌冬季パラリンピックが終わった約1ヶ月後に、金正恩委員長と私は板門店で初めて会いました。国連は「板門店宣言」を歓迎し、積極的に支持してくれました。第2回南北首脳会談と米朝首脳会談、今回の平壌会談までの継続的な出会いの頼もしい力になってくれました。
私は、先の第72回国連総会で、完全かつ持続可能な平和を達成するために、北朝鮮が自ら平和を選択してほしいと述べました。 国連はもちろん、世界の全ての人々の願いでもありました。
北朝鮮は、私たちの願いと求めに応えました。今年の元旦、金正恩委員長は新年の挨拶で、朝鮮半島情勢の方向を転換しました。北朝鮮の平昌冬季オリンピックへの参加と代表団派遣は、平和の扉を開く決定的な契機となりました。
北朝鮮は4月20日、核の開発路線を正式に終了し、経済発展のためにあらゆる努力を傾けてきました。政権樹立70周年を迎える9月9日には、核能力を誇示する代わりに、平和と繁栄の意志を明らかにしました。
北朝鮮は長年の孤立から自ら抜け出し、再び世界の前に立ちました。今、国際社会が北朝鮮の新しい選択と努力に応える番です。金正恩委員長の非核化の決断が正しい判断であったことを確認できるようにしてあげなければなりません。北朝鮮が恒久的かつ強固な平和の道を歩み続けていけるよう導いてあげなければなりません。
国連の役割が重要です。国連事務局は、国際会議に北朝鮮の官僚を招くなど、対話と包容の努力を続けてきました。国連は「誰も置いてきぼりにしない」と宣言しています。私は、持続可能な発展という国連の夢が、朝鮮半島で実現することを心から願います。
私は、国際社会が道を開いてあげるなら、北朝鮮が平和と繁栄に向けた歩みを止めないことを確信します。韓国は、北朝鮮をその道に導くためにあらゆる努力を尽くします。国連が、経験と知恵を惜しみなく分けてくれることを望みます。
議長。
朝鮮半島の非核化と平和定着のプロセスは、北東アジアにおける平和と協力の秩序を形成するプロセスでもあります。北東アジアは、世界人口の5分の1が暮らし、世界経済の4分の1を支えている地域です。しかし、葛藤により、より大きな協力へと進めずにいます。
朝鮮半島から、北東アジアの葛藤を解きほぐしていきます。私は、8月15日、北東アジア6カ国と米国が同参する「東アジア鉄道共同体」を提案しました。今日の欧州連合を作った「欧州石炭鉄鋼共同体」が、生きた先例です。
「東アジア鉄道共同体」は今後、東アジアにおけるエネルギー共同体と経済共同体、さらには北東アジアにおける多国間平和安保体制に繋がることのできる出発点となり得るでしょう。南と北は、切断された鉄道と道路の連結に着手しました。今後、「東アジア鉄道共同体」の本格的推進のため、域内諸国とも緊密に協議していきます。北東アジアに国連精神である多国間主義を実現し、共栄の未来を作り上げる道に対する国際社会の支持と協力を要請します。
議長。
大韓民国は、激動の現代史を国連と共に乗り越えてきました。国連と大韓民国は、価値と哲学を同じくしています。
先の9月、大韓民国政府は、「人間中心」の国政哲学に基づき、「包容国」を宣言しました。 私たちの国民は、公正かつ正義の叶う国、ただ一人の国民も差別されず、共に生きる社会へと進んでいます。
「包容性」は、国際的な開発協力の哲学でもあります。誰一人として疎外されない国際環境を作るため、開発協力の規模を着実に拡大していきます。人権侵害と差別に苦しむ世界の人々、特に子供・青少年・女性・障害者のような脆弱階層への支援も増やしています。
最近5年間に難民に対する財政支援を5倍に拡大しました。今年からは、毎年5万トンの米を深刻な食糧危機に瀕している発展途上国に支援しています。
私は、人道的な危機を根本的に解決するためには、「平和」「開発」「人権」を網羅する総体的なアプローチが必要だと思います。大韓民国政府は、「全ての人々に意味ある国連」を作るために共に悩み、力を貸すでしょう。
今年は「世界人権宣言」70周年を迎えます。人権のために不当な権力に対抗したことのある人なら誰でも、「万人は自由で平等である」という世界人権宣言の最初の条項を胸に刻んでいます。 私は特に、「実質的な男女平等の実現」を主な国政課題として推進しています。
女性に対するあらゆる差別と暴力に対し、さらに断固たる対応をしています。韓国は、「日本軍慰安婦」被害を直接に経験しました。国際社会における「女性、平和、安全保障」の議論に積極的に参加し、紛争地域の性暴力を撤廃するための国際社会の努力にも同参していきます。
気候変動への対応と低炭素経済への移行は、私たちの世代に与えられた挑戦であり、課題です。大韓民国政府は、2030年までに再生可能エネルギーの発電量を20%まで増加します。パリ協定に従って2030年までに温室効果ガス削減目標を誠実に履行し、発展途上国の気候変動への対応を支援し、持続可能な発展を助けます。
議長、事務総長、各国代表の皆さん。
韓国と北朝鮮にとって国連は、国際機関を超えた意味があります。1991年9月17日、第46回国連総会で、韓国と北朝鮮の国連同時加入案が全加盟国159カ国の全会一致で採択されました。その日は「世界平和の日」でもありました。
南北の首席代表は、それぞれの演説で、「たとえ南北が別々の加盟国として出発したとしても、いつかは和解と協力、平和を通して一つになるだろう」と誓いました。27年が経った今、南と北は、その日の誓いを実現しています。
分断の障壁を乗り越え、心の壁を崩しています。私たちは、「共にするならいくらでも平和を実現できる」という事実を国際社会に証明しています。
皆さん。
私たちは誰もが平和を願います。 愛する家族、隣人、懐かしい故郷が平和です。 持てるものを分かち合うことが平和です。
全ての人が共に成し遂げた平和は、全ての人のための平和です 朝鮮半島の恒久的平和と非核化に向かう道、平和な世界に向かう旅に、全ての皆さんがいつも共にあってくださることを信じます。
ありがとうございました。