写真出典:青瓦台
2019年9月24日午後(現地時間)、文在寅大統領がニューヨークで開催された第74回国連総会にて基調演説を行いました。その内容を全訳してご紹介します。
全文和訳はこちらです↓↓
国連と加盟国の献身により世界の多くの問題が解決され、平和のための努力が実を結んでいます。
深い尊敬と感謝の挨拶を申し上げます。
ティジャニ・ムハンマド=バンデ総会議長の就任をお祝いし、議長の卓越したリーダーシップにより多国間協力が拡散される総会になることを期待します。
「持続的な平和(sustaining peace)」という国連の目標は、朝鮮半島の目標と同じです。
平和と開発の好循環を通じ平和を持続させようとするアントニオ・グテーレス事務総長の努力に敬意を表します。
議長、事務総長、各国代表の皆さん。
人類の平和と「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けた国連の努力は必ず達成されるでしょう。
世界は災難と緊急救援活動に共に取り組み、平和を維持するための行動に参加し、互いに助け合っています。
国連は引き続き、国際社会の協力の中心にならなければなりません。
韓国は、国連の恩恵を多く受けた国です。
国連が設立された年に植民地支配から解放され、国連と国際社会の助けにより、戦争の惨禍を克服することができました。
今韓国は、その発展に見合うだけの責任意識を持ち、東アジアと国際社会の平和と繁栄のために協力しています。
2017年11月に国連が採択した「オリンピック休戦決議」は、韓国にとってもう一つの大きな助けになりました。
その決議により、2018年春に予定されていた米韓連合訓練が猶予され、北朝鮮選手団が平昌に来ることのできる環境が造成されました。
安全が懸念されていた平昌冬季オリンピックは平和オリンピックに転じ、南北の間に対話が再開される貴重な契機となりました。
南北の対話は、米国と北朝鮮の対話へと続きました。
トランプ大統領と金正恩委員長の決断が、朝鮮半島の状況を劇的に変化させる動力となりました。
今、朝鮮半島は、銃声数発に情勢が激しく揺れ動いた過去とは明らかに変わりました。
朝鮮半島の平和に向けた対話の場は依然として健在であり、南と北、米国は、非核化と平和のみならず、それ以降の経済協力まで見据えています。
韓国は、平和が経済協力につながり、経済協力が再び平和を強固にする「平和経済」の好循環構造を作ろうとしています。
「欧州石炭鉄鋼共同体」と「欧州安全保障協力機構」がヨーロッパの平和と繁栄に相互肯定的な影響を与えた事例が、よい手本です。
朝鮮半島の平和は依然として継続する課題であり、世界の平和と朝鮮半島の平和は不可分の関係です。
韓国は北朝鮮との対話を続けていき、国連加盟国の協力の中で完全な非核化と恒久平和のための「道を探し出し、作っていく」でしょう。
議長、事務総長、各国代表の皆さん。
平和は対話を通じてのみ作ることができます。
合意と法に裏打ちされた平和が真の平和であり、信頼に基づいて成し遂げた平和こそ恒久的なものとなり得ます。
過去1年半、対話と交渉により、朝鮮半島は意味ある成果を見せました。
分断の象徴だった板門店は、拳銃一丁すらない非武装地帯となり、南北は共に非武装地帯内の哨所を撤去し、対決の象徴であった非武装地帯を実質的な平和地帯に変えています。
絶え間ない停戦協定違反が南北間の軍事的緊張を高め、時には戦争の脅威を高めさせましたが、昨年の9.19軍事合意後にはただ一件の違反行為も発生していません。
特にお知らせしたいことは、朝鮮戦争当時、南と北、国連軍と中国軍の最大の激戦地だった「ファサルモリ高地」で、今までに計177柱の遺骨を発掘したことです。
韓国軍の遺骨はもちろん、米軍や中国軍、フランス軍、連邦軍と推定される遺骨まで発掘されました。
身元を確認した韓国軍の遺骨3柱は、66年ぶりに家族の懐に抱かれました。
平和のための努力がもたらした、やりがいのある出来事といわざるを得ません。
トランプ大統領が、現職のアメリカ大統領として初めて、軍事境界線を越えて北朝鮮の地に足を踏み入れることができたのも、このような努力の結果です。
軍事的な緊張緩和と南北米首脳間の固い信頼が、板門店における電撃的な3者会合を実現させました。
金正恩委員長の手を握って軍事境界線を越えたトランプ大統領の行動は、その行動自体により、新しい平和の時代の本格的なはじまりを宣言しました。
朝鮮半島と北東アジアの平和の歴史に永遠に残る偉大な一歩でした。
私は、両首脳がそこからもう一歩大きく進んでくれることを希望します。
朝鮮半島問題を解決するための私の原則は変わりません。
その原則は第一に、戦争不容認の原則です。
韓国は、戦争が終わっていない停戦状態です。
朝鮮半島で二度と戦争の悲劇があってはなりません。
このため私たちは、人類史上最も長い停戦を終え、完全な終戦を実現しなければなりません。
第二に、相互間の安全保障の原則です。
韓国は、北朝鮮の安全を保障するでしょう。
北朝鮮も、韓国の安全を保障することを願います。
互いの安全が保障されるとき、朝鮮半島の非核化と平和体制を迅速に構築することができます。
少なくとも対話を進めている間は、すべての敵対行為を中断しなければなりません。
国際社会も、朝鮮半島の安保懸念を解消するため、共に努力してくれるよう希望します。
第三に、共同繁栄の原則です。
平和は、単に紛争がないことではありません。
互いに包容性を強化し、依存度を高め、共同繁栄のために協力することが真の平和です。
南北が共同する平和経済は、朝鮮半島の平和を強固にし、東アジアと世界経済の発展に貢献するでしょう。
私は今日、国連の価値に完全に合致するこの3つの原則に基づき、国連とすべての加盟国に対し、朝鮮半島の腰を横切る非武装地帯を国際平和地帯にすることを提案したいと思います。
朝鮮半島の非武装地帯は、東西250キロ、南北4キロの巨大なグリーン地帯です。
70年の軍事的対決が生んだ悲劇的な空間ですが、逆説的にその期間のあいだ、人間が足を踏み入れない自然生態系の宝庫に変貌し、JSA、GP、鉄柵線など、分断の悲劇と平和の願いが共に込められた象徴的な歴史空間になりました。
非武装地帯は、世界がその価値を共有すべき人類の共同遺産です。
私は、南北間の平和が構築されれば、北朝鮮と共同でユネスコ世界遺産への登録を推進するつもりです。
板門店と開城をつなぐ地域を平和協力地区に指定し、南と北、国際社会が共に朝鮮半島の繁栄を設計し得る空間に変え、非武装地帯内に南北に駐在中の国連機関と平和・生態・文化に関連する機構などが居を構え、平和研究・平和維持(PKO)・軍備統制・信頼構築活動の中心地になるなら、名実共に国際的な平和地帯となり得るでしょう。
非武装地帯には約38万発の対人地雷が埋設されていますが、韓国軍単独で除去するには15年かかると予想されます。
「国連地雷行動組織」など国際社会との協力は、地雷除去の透明性と安定性を保障するのみならず、非武装地帯が一気に国際的な協力地帯となるでしょう。
北朝鮮が真正に非核化を実践していくなら、国際社会もこれに相応する姿を見せなければなりません。
国際平和地帯の構築は、北朝鮮の安全を制度的、現実的に保障することになるでしょう。
同時に、韓国も恒久的な平和を手にすることになるでしょう。
金正恩委員長と私は、非武装地帯の平和利用について合意し、切断された鉄道と道路の連結作業に着手し、北朝鮮の鉄道現況を実査しながら、鉄道・道路の連結と現代化に向けた着工式も開催しています。
これらすべてが、朝鮮半島の平和基盤を固め、北東アジアの平和と安定に貢献するプロセスです。
朝鮮半島の腰である非武装地帯が平和地帯に変わったなら、朝鮮半島は、大陸と海洋を一つにして平和と繁栄をリードする橋梁国として発展するでしょう。
北東アジア6カ国と米国が参加する「東アジア鉄道共同体」のビジョンも現実のものとなるでしょう。
議長、事務総長、各国代表団の皆さん。
東アジアは、第二次世界大戦が終わった後、侵略と植民地支配の痛みを乗り越え、相互に緊密に交流しつつ、経済的な分業と協業により、世界史に類例のない発展を遂げてきました。
自由貿易の公正な競争秩序がその基盤となりました。
過去に対する真摯な省察の上に、自由で公正な貿易の価値を固く守り協力するとき、私たちはさらに発展していくことができるでしょう。
韓国は、近隣諸国をパートナーと考え、互いに協力し、朝鮮半島と東アジア、ひいてはアジア全体に「人間中心、共生繁栄の共同体」を拡張しようとしています。
来たる11月、韓国の釜山で開かれる「韓・ASEAN特別首脳会議」と「韓・メコン首脳会議」がその礎石を据える契機となるでしょう。
国連の「持続可能な開発目標」と「パリ気候変動枠組条約(パリ協定)」は、私たちが多国間協力によって成し遂げるべき代表的な課題です。
韓国は、「韓国型持続可能開発目標(K-SDGs)」を策定し、国際社会に約束した持続可能な開発目標の履行に多くの努力を傾けています。
「持続可能発展法」、「低炭素グリーン成長基本法」、「国際開発協力基本法」などの関連法を制定し、「持続可能発展委員会」を置き、制度的に履行しているところです。
これまで韓国は、国連平和維持活動に1万7千人の将兵を派遣し、病気や自然災害に苦しむ世界の人々に寄り添ってきました。
韓国は、グテーレス事務総長が主導した「平和維持構想」と「共有された責務に対する宣言」を支持し、ODAの規模をさらに拡大し、平和と開発の好循環を支援していきます。
特に、来年20周年を迎える国連安保理の「女性・平和・安保」決議と2017年にバンクーバーで合意した「エルシーイニシアチブ」に積極的に参加し、2021年には次期「平和維持長官会議」を韓国で開催します。
韓国は来年、「グリーン成長とグローバルゴールズ2030のためのパートナーシップ(P4G)」、「第2回P4G首脳会議」を主催します。
パリ協定と持続可能な開発目標の履行に向け、国際社会の結束を強化する契機となるでしょう。
政府、国際機関、企業と市民社会の多くの関係者が関心を持ち、参加してくれるよう希望します。
今年は韓国にとって非常に特別な年です。
100年前の韓国国民は、日本の植民地支配に抵抗して3.1独立運動を起こし、大韓民国臨時政府を樹立しました。
100年が過ぎた今、韓国は、人類愛に基づいた平等と平和共存を目指し、先頭に立って努力しています。
今後も韓国は、国際社会と連携しながら、平和・人権・持続可能な開発という国連の目標を実現するための責任と役割を果たし、国連の究極的な理想である「国際平和と安保」が朝鮮半島で実現されるよう共に努力していきます。
国際社会の支持と協力により「刀がすきに変わる」奇跡が朝鮮半島に起きることを期待します。
ありがとうございました。
【参考動画】