|【新聞を読む】公判中心の取材システム改革が切実
ミン・ドンギ メディア専門記者| mediagom@gmail.com
承認 2019.11.12 11:54:26
修正 2019.11.12 12:50:38
<“情景芯、2年間に借名口座6つ...美容師・Facebook友人の名前借りて”>
今日(11月12日)、朝鮮日報が1面で報じた記事の見出しです。引用符の中の文章ですが、大きな見出しを見た読者は、これを事実として受け入れる可能性が高いです。しかし朝鮮日報が付けた見出しは、検察の判断に過ぎません。
正確に言うと、検察が情景芯(チョン・ギョンシム)教授を追加起訴するにともなって公訴状に摘示した内容です。実際、朝鮮日報の記事の文章のほとんどは「検察が明らかにした」「検察の公訴状によると」で始まるか、終わります。
ところが朝鮮日報は、事実と断定するような内容で見出しを付けます。検察が公訴状に摘示した内容は、事実かもしれませんが、そうでない場合もあります。はっきりしていることは、チョン・ギョンシム東洋大教授が、検察が提起した内容のほとんどを否定しているということです。
これは今後、裁判過程を通じて検察と弁護人間の「熾烈な法理争い」が繰り広げられるということであり、検察が公訴状に摘示した内容と「反対の証拠や証言」が出てくる可能性もあるということです。
マスコミが検察の公訴状を参考に報道することはできますが、事実と断定して報道することには慎重でなければならない理由です。しかし今日(12日)発行された全国単位の総合日刊紙を見ると、一部マスコミは「検察の公訴状=事実あるいは真実」と断定するような見出しを付けています。
私が見るところ、これは検察の被疑事実公表とはまた別の次元の問題です。とりあえず今日、関連内容を報道した新聞のおおよその見出しを見てみましょう。
<情景芯、容疑だけで14個... 娘も「共犯」と摘示>(京郷新聞8面)
<情景芯容疑、3つ増えて14個... 検察、追加起訴>(国民日報8面)
<検 "情景芯、曺国長官辞任2週間前にも借名取引続ける“>(東亜日報6面)
<"檀国大インターン、水増しして「96時間」と記載しながら、KIST証明書には「誠実に」の文句追加">(東亜日報6面)
<検、情景芯の娘「不正入試の共犯」と公訴状に摘示... 曺国、近日中に取り調べ>(ソウル新聞8面)
<検、情景芯、計14個の容疑で拘束起訴...娘「不正入試」共犯と摘示>(世界日報1面)
<"情景芯、2年間に借名口座6つ... 美容師・Facebook友人の名も借りて">(朝鮮日報1面)
<"情景芯、曺国が大統領府首席になるや行きつけ美容室まで動員し借名取引">(中央日報2面)
<情景芯の79ページ公訴状「曺国の名前」あちこちに... 娘も共犯と摘示>(ハンギョレ6面)
<検 "情景芯、曺国長官指名後にも23回の借名取引">(韓国日報12面)
<公訴状に「表彰状偽造共犯」に娘を指摘... 曺国も挙論>(韓国日報12面)
朝鮮・中央日報、見出しから「検察」と「公訴状」を初めから抜く
多くのマスコミが検察の公訴状をもとに記事を書きました。これ自体を責めるつもりはありません。私もそうしただろうと思いますから。問題は、上でも話しましたが、チョン・ギョンシム教授側が、検察が提起した容疑内容のほとんどを否定しているということです。
このような状況であれば、チョン・ギョンシム教授側の主張や反論も紙面に割り当てるべきだと思います。「裁判戦略」ゆえに弁護側が詳細な内容の言及に消極的なら、検察捜査の問題点や検察捜査を批判する法曹人の主張や見解を反映する方法もあります。
しかし今日付(12日)の新聞にはこのような「公平性」を示した新聞はほとんどありません。再三話したように、検察の公訴状は、これまで検察がチョン・ギョンシム教授などを捜査して、公訴状に摘示したように「判断」したということであり、それ自体が「事実」ではありません。
私は、検察の公訴状に多くの比重を置いて報道したマスコミであれば、これに反駁する内容も「反論次元」から当然のごとく紙面に含ませるべきだと思いますが、チョ・グク前法相がフェイスブックに書いた文を引用する式の報道がほとんどです。
事実、最も問題があるマスコミは、朝鮮・中央日報です。上で紹介した見出しからもわかるように、この二つの新聞は最初から見出しに「検察」や「公訴状」という単語がありません。引用符を付けてはいますが、事実上、「検察の公訴状」を「事実」と断定するような見出しを付けています。
<"情景芯、2年間に借名口座6つ... 美容師・Facebook友人の名も借りて">(朝鮮)と<"情景芯、曺国が大統領府首席になるや行きつけ美容室まで動員し借名取引">(中央)という見出しを「読みながら」、これが検察の公訴状の内容に過ぎず、事実あるいは真実かどうかは裁判を通じて明らかになると思う方がどのくらいいるでしょうか? そんなにはいません。
朝鮮・中央日報の見出しは、他の新聞と比べてもひときわ突飛しています。私が両紙の見出しを見ながら、公訴状の内容を事実と断定したがる朝鮮・中央日報の「意志」が反映されたものと解釈する理由です。
KBSのオム・ギョンチョル新任報道局長の「実験」が成功しなければならない理由
今日(12日)、KBS第1ラジオの『キム・ギョンレの最強時事』に、KBSのオム・ギョンチョル新任報道局長が出演しました。オム・ギョンチョル局長は、出入り先中心の取材慣行を改善したいという意志を明らかにし、目を引きました。
彼は「検察記者室に常駐する国内記者が200人程度になる」という点に言及し「各記者が記事を書けば、一日にいかに多くの記事があふれるだろう、量的なバランス問題がある」と指摘しました。
それほどに検察発の記事がマスコミから降り注ぐという話です。私は、オム局長の次の発言に注目しました。次のとおりです。
「昨日(11日)、チョン・ギョンシム教授を起訴したが、容疑は15個だ。しかしチョン教授側はすべて否認している。それなら、公判でチョン教授はおそらく反対の証拠を出すだろう。ひょっとしたら裁判所が、最も多くの真実が明らかになる場となるかもしれない。(マスコミと記者が)その場に行こうということだ。」
私は、オム局長が述べたように、現在の「検察中心」の取材システムではなく「公判中心」だったら、チョン・ギョンシム教授に関する報道もかなり変わっただろうと思います。ずっと以前から「出入り先中心の取材慣行」を批判してきた立場から、私も、公判中心の取材システムへの改革が切に必要だと思います。私がオム・ギョンチョルKBS新任報道局長の「実験」を支持する理由です。
ミン・ドンギ メディア専門記者
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出典: 告発ニュースドットコム