【中央日報】入力2019.12.15 10:54 修正2019.12.15 11:51
チュ・インヨン記者
仁川のある大型スーパーで30代の父親と12歳の息子が食べものを盗んで捕まった。「あまりにもお腹が空いたからそうした」とうなだれたこの父子に、小さな「奇跡」が起きた。
15日、仁川中部警察署・永宗(ヨンジョン)地区隊によると、10日午後4時ごろ、Aさん(34)とその息子B君(12)は、仁川市中区所在のあるスーパーに入った。Aさんは、食料品売り場の隅でしばらくためらった末、息子がしょったカバンにこっそり品物を入れた。彼らの窃盗は、スーパー内のCCTVを見ていた従業員にすぐに発覚した。
息子のカバンから出てきた品物は、牛乳2パックとリンゴ6個、飲み物数個。金額にすれば1万ウォン(約1000円)前後だ。Aさんは汗をたらたら流しながら従業員に「許してほしい」と訴え、通報を受けた警察が出動すると「空腹のあまり、してはいけないことをした」と涙を流した。
Aさんは、タクシー運転手をしていたが、糖尿病と甲状腺の病気を患い、6ヶ月間仕事ができなかったと警察に打ち明けた。 Aさんが住んでいる賃貸アパートには、独り身の母親と7歳の次男が待っていた。基礎生活保障の受給者に選ばれていたが、4人家族が生計を立てるのは難しかった。
|クッパ食べさせた警察... 20万ウォンの封筒残した男性
事情を聞いたスーパー社長は、処罰を望まなかった。
警察は、この父子に訓戒措置を行うことにし、近くの食堂に連れて行ってクッパを1杯ずつ注文してあげた。仁川中部警察署のイ・ジェイク警衛は、MBCとのインタビューで「朝食と昼食を抜いたと父子が言うので...今どきご飯に飢えた人がどこにいるだろうか」と振り返り、涙を拭った。
ところがその食堂に、ある中年男性が入って来ると、この父子のテーブルに白い封筒を投げるように置き、すばやく出ていった。封筒の中には現金20万ウォン(約2万円)が入っていた。スーパーで偶然に父子の事情を聞き、現金を引き出して食堂まで訪ねてきたのだった。警察は感謝状を贈ろうとこの男性の行方を探したが、結局見つからなかった。
警察は、行政福祉センターを通じてAさんの仕事を斡旋し、B君には無料給食カードが受けられるように助けた。
|買い物して手ぶらで帰った客たち... 「助けたい」との問い合わせも
奇跡は続いている。
14日、そのスーパーをある女性が子供と一緒に訪れ、リンゴ1箱を購入した後、そのまま置いていった。この女性はスーパー従業員に「Aさんについてのニュースを見て涙が止まらなかった。少しだがリンゴでも1箱送って子供たちに食べさせたい」と話した。
1時間ほど後には、ある男性が二人の息子と一緒に来て、食料品のお金をたっぷり払い、手ぶらで帰った。この男性は従業員に「店で何か見つくろって(Aさんに)届けてもらえないか」と言い「他にも困っている方を知っているなら、他の方たちにも分けてあげてほしい」と依頼した。
問い合わせの電話も後を絶たない。「助けたい」として、その方法を問う電話だ。口座にお金を送りながら、生活必需品を代わって届けてほしいという依頼も続いた。
AさんはMBCに「家長として仕事ができずにこんなことになり、子どもたちに最もすまない」としながらも、食堂に現金封筒を置いて行った男性を必ず探したいと話した。彼は「知り合いでもないのにそうして下さったということ自体、あまりにもありがたい」と語った。
記事出典:中央日報