【全文】文在寅大統領「プロジェクトシンジケート」寄稿文
ニューシス 入力 2019.12.26 11:22
"無数の行動が生み出す平和“ – 朝鮮半島平和構想
平和は静かな状態ではありません。様々な出会いと対話、不可能を可能にする大胆な行動、平和がより良いことの理由を絶えず見つけ出してこそ、平和はその姿を現します。私は森が好きです。よく見ると、森は休むことなく動いています。樹木の葉は光合成を行い、アリは列を作って餌を運び、弱い動物と捕食者の間には絶え間ない緊張感が漂います。森が平和な理由は、無数の行動が互いに関連性を持ち、互いに競争しながらも同時に依存して生きているからです。
「平和への道はない。平和が道だ」というガンジーの言葉のように、平和への熱望を大切にしながらもガヤガヤと自己主張し、あちこちで賛成と反対にぶつかるプロセスがすべて平和です。平和は一人で達成することはできません。味方を一方的に応援しても、結局、相手を認めないなら、試合自体ができないサッカーの試合と同じです。サッカースタジアムのてんやわんやの中に平和があります。
「平和を成し遂げよう」という言葉を出した瞬間、平和が始まると思います。黙々と待って平和が訪れるならよいのですが、平和は行動せずには訪れません。2017年末まで朝鮮半島は戦争を心配していましたが、韓国国民は平和を願望し、私はベルリンから北朝鮮に平和のメッセージを伝えました。これに呼応した北朝鮮が昨年、平昌冬季オリンピックに参加しながら、南北首脳会談と米朝首脳会談の糸口を引き出しました。今、朝鮮半島は「平和作り」の真っ最中です。目に見えるイベントがなくても、水面下では滔々と流れています。JSA(共同警備区域)には拳銃1挺も残されておらず、非武装地帯の警戒所を撤収し、戦没者の遺骨を発掘しています。平和は少しずつ前に進んでいます。
しかし、朝鮮半島の平和のためには、より多くの行動が必要です。北朝鮮の核とミサイルの問題は未だ解決されておらず、北朝鮮は依然として心を開き切れずにいます。北朝鮮と米国は、互いに相手が先に行動することを求めている状況です。北朝鮮が真実に非核化を実践していくなら、国際社会もこれに相応する姿を見せなければなりません。幸いなことに、米朝首脳間の信頼は相変わらずであり、対話を継続しようという意志も変わりません。行動には行動で応えなければならず、国際社会が共に行動すべき時だと思います。
私は先の国連総会演説で、戦争不容認、相互間の安全保障、共同繁栄という朝鮮半島の平和3原則を闡明しました。これらの原則を土台として、朝鮮半島の腰を横切る非武装地帯の “国際平和地帯化” を国際社会に提案しました。朝鮮半島の非武装地帯は、東西250キロ、南北4キロの巨大なグリーン地帯です。70年の軍事対決が生んだ悲劇的な空間ですが、逆説的にその期間のあいだ人間が足を踏み入れることのない自然生態系の宝庫に変貌し、JSA、GP(相互監視所)、鉄柵線(停戦ライン)など分断の悲劇と平和の願いが共に込められた、象徴的な歴史空間となりました。
私は、国際社会が非武装地帯に埋まっている38万発の地雷を共に除去し、国連をはじめとする国際機関が非武装地帯に置かれるようになれば、朝鮮半島における安全保障の機能を果たせると思います。北朝鮮の安全を制度と現実で確保し、同時に韓国も恒久的な平和を手にすることができるでしょう。実質的な平和体制が実現し、国際社会の支持の中で朝鮮半島の非核化を実現することのできる契機となるでしょう。
韓国は橋梁国を夢見ています。地政学的に4大強国に囲まれた国は、世界の中でも韓国しかありません。朝鮮半島はかつて、大陸においても海洋においても辺境であり、時には強大国の角逐の場となりました。それが、韓国が経験した痛みの歴史でした。しかしながら、朝鮮半島が平和を実現すれば、大陸と海洋を結ぶ国、北東アジアの平和と繁栄の秩序を先導する国となることができます。朝鮮半島の橋梁としての役割は、私たち自身にとっても、北東アジアとASEANにとっても、また、世界全体の平和的な秩序にとっても、役立つことでしょう。
韓国は橋梁の役割を通じて「人中心の共存繁栄する平和共同体」を実現しようとしています。新北方政策は、大陸に向かって疾駆する韓国の抱負です。中国とロシアのみならず、中央アジアとヨーロッパにまで協力の基盤を広げ、北東アジア鉄道共同体により、多国間協力、多国間安保の礎石を築こうとしています。新南方政策は、海洋に向かって疾駆する韓国の抱負です。ASEANやインドとの関係を周辺主要国のレベルに格上げし、共同繁栄する協力関係に発展させていきたいと思います。
平和を通じて韓国が進もうとする道は、究極的に平和経済です。南北間の切断された線路と道路を繋ぐことは、東アジアの平和と繁栄をリードする橋梁国への第一歩です。平和経済は、分断がもはや平和と繁栄の妨げにならない時代を作り、南北が周辺諸国と連携した経済協力を通じて共に繁栄し、再び平和を堅固にする、好循環を成し遂げようとする道です。
韓国は国際社会の恩恵を多く受けてきた国です。国連が設立された年に植民支配から解放され、国連と国際社会の助けにより、戦争の惨禍を克服することができました。これから韓国は、発展した分だけの責任意識を持ち、国際社会の平和と繁栄のために貢献していきます。平和経済は、共に豊かに暮らす世界に向かう人類の夢を早めることでしょう。
平和がいくら切実だといっても、韓国が勝手にスピードを出すことはできません。平和を共に作っていく相手があり、国際秩序があります。米朝間の実務交渉と第3回米朝首脳会談は、朝鮮半島の非核化と平和構築のための全プロセスにおいて最も大きな山場となるでしょう。いつにも増して国際社会の支持と共同行動が必要です。平昌冬季オリンピックで作られた平和の波は、2020年の東京オリンピックと2022年の北京冬季オリンピックまでたゆみなく続いていくでしょう。南北は、2032年夏季オリンピックの共同開催誘致に向け協力していくことで一致しました。国際社会が呼応して下さるようお願いします。
対話と行動が継続されれば、お互いがより必要になり、結局は平和が訪れることを確信します。より頻繁に平和を語り、平和へと進みながら、お互いの考えをすべて出し、あれこれと行動してみるとよいでしょう。平和を作っていく朝鮮半島で、国際社会が助言しながら共に歩んで下さればと願います。分断と紛争が生んだ不幸を払いのけ、朝鮮半島の平和が人類の希望となるその日まで、休むことなく…。
◎共感メディア ニューシス kyustar@newsis.com