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(ソウル=フォーカスデイリー)ナム・ギチャン記者=去る10月2日夜、MBC『PD手帳』が「長官と表彰状」編を扱いながら、その波紋が馬鹿にならない。
この日の放送では、検察が曺国(チョ・グク)法務省長官の家族に関する数多くの疑惑の中で唯一起訴した、チョ長官夫人・情景芯(チョン・ギョンシム)教授の「東洋大表彰状偽造問題」を扱った。
この日の『PD手帳』の放送に対し「検察の起訴がいかにずさんでごり押しに近いものだったのかを示す証言と事実などがきちんと扱われた」という評価が一日中オンライン空間を熱くした。
検察がチョン教授を起訴して数日も経たないうちに、検察の公訴状がたったA4用紙1ページ分しかなく杜撰だという批判が提起されるや、検察発の疑惑報道は以前よりもいっそう無差別的に猛威を奮うようになった。
「チョ・グク一家詐欺団」というサブタイトルをつけてもいいほどに、メディアの報道は、「単独」「スクープ」競争に追われるように、検察の主張を根拠にした疑惑報道を吐き出した。
去る9月中旬、チョン・ギョンシム教授のパソコンから東洋大の表彰状を偽造した形跡が発見されたという記事は、今回のチョ・グク政局で見せたメディアの無差別的報道をそっくりそのままさらけ出した事例だ。
9月17日、KBSやSBSなど地上波放送を含むjtbcなどは、“単独”というタイトルをつけ「チョン教授が息子の表彰状をスキャンして娘の表彰状を偽造した」という被疑事実を確証的に報道した。
中央日報は、ポン・ジュノ監督の映画『寄生虫』のシーンになぞらえ「『寄生虫』のような偽造状況、チョン・ギョンシム、息子の表彰状を切り抜いて作った」と具体的に描写までし、“小説”なのか“記事”なのか分からない創作物を報道した。
チャンネルAは「映画そっくりの“表彰状偽造”」、東亜日報は「[単独]映画『寄生虫』のように表彰状を偽造した」、朝鮮日報「映画『寄生虫』のように...息子の賞状をスキャン、娘の表彰状を偽造した状況」など、より刺激的なタイトルで容疑を描写しているところに深刻性が加わった。
メディアのこのような報道は、いくら検察が流したものとはいえ、記事だけ見るとまるでチョン教授の容疑が裁判を通じて確定したものであるかのように報道しているところに問題があるように思えた。
検察の主張は、チョン教授の息子の表彰状をスキャンし、職印などをフォトショップで切り取り、ワードプロセッサで表彰状の文を入力して偽造したというものだ。控訴状とは全く異なる容疑内容だ。
しかしこのような報道に対し、SNSでは市民を中心に様々な問題があるという指摘が出てきた。表彰状の原本がまだ確認されていない状況では、検察の一方的な主張に過ぎないという指摘が大部分だった。
表彰状の鮮明な銀箔ステッカーもそうで、「専門家でも簡単には出来ない偽造という過程をあえて踏む必要があるのか」とし、もっぱら穴が見えると一つ一つ明らかにした。
これらの穴は、『PD手帳』が明らかにした事実により、メディアと検察、自由韓国党が作り上げた合同作品だったという合理的な疑いを持つのに十分だった。
そのために国民は憤慨しているように見える。事実、『PD手帳』に放送された内容は、1ヶ月前からFacebookなどで一般市民と専門家らが粘り強くフィクションに過ぎないと主張してきたものと同じだ。
いつごろからか、目覚めている、いや常識がちょっとある市民らは、検察が流し、メディアが創作し、韓国党が政治攻勢をかける奇妙な現象に疑問を抱きはじめた。
SNSで市民らは、メディアの報道が出てくるたびに、互いの情報を交換しながら一つ二つと検証していった。
「まさか私だけがこう考えているわけじゃないだろう」から出発した疑念は、ついに先週末の瑞草(ソチョ)洞の検察庁前で爆発した。
「やっぱり自分だけがこう考えていたんじゃなかった」を確認した瞬間、市民らは憤怒した。検察とメディアと韓国党への怒りは、こうして大きくなるばかりだった。
『PD手帳』に熱狂した市民らは一方で、なぜ今になってメディアが事実を報道するのかについても憤怒する。これまで全くメディアに報道されなかったのに、なぜ一か月近く経ってやっと放送されたのかということだ。
したがって今回の検乱で「検察とメディアと韓国党は共犯だ」という話が市民の間に急速に共感されるようになった背景でもある。
この日の『PD手帳』は、チョ・グク政局に雷管として浮上した、信頼できないチェ・ソンヘ総長の陳述を確認した。
当初検察が表彰状偽造によりチョン・ギョンシム教授を起訴することになった重要な陳述は、チェ・ソンヘ総長の「総長名義で表彰状を発行したことがない」という主張だった。
チェ総長は、シリアル番号が異なるために偽造だと主張しているが、東洋大助手などの陳述によると、シリアル番号はそれぞれだった。
チェ総長の主張どおりなら、東洋大で発行された数多くの表彰状は偽造と見なければならない。しかし東洋大卒業生が受け取った数百枚の表彰状がすべて偽造という主張は、話にならない主張だ。
もう一つの問題は、チェ総長と韓国党のチェ・ギョイル議員との関係だ。二人は古くからの知人であるのはもちろん、チェ議員が東洋大に助力してきた形跡があちこちに見つかる。
チェ総長は、表彰状に関連して参考人として検察に出頭する前、韓国党の議員やジャーナリストにも会ったと見られる。チェ総長がチョン・ギョンシム教授に不利な陳述をした可能性が十分に窺える。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団のユ・シミン理事長も1日、YouTube番組『アリルレオ』で、チェ・ソンヘ総長が栄州(ヨンジュ)地方区の議員であるチェ・ギョイル議員と接触したとした。
もちろん、これに対しチェ議員は2日、報道資料を通じ「去る8月にチェ・ソンヘ総長に会ったというユ理事長の発言は全く事実ではない」と主張した。
韓国党と検察との癒着関係のハイライトは、9月6日、チョ・グク法務長官の聴聞会当日だ。この日、ソウル中央地検特捜2部はチョン教授を私文書偽造の容疑で起訴した。
当時検察は、私文書偽造の控訴時効の故に起訴したと発表した。検察が公訴時効の基準にしたのは、表彰状に記載されている2012年9月7日だ。
検察は表彰状の授与日を偽造日として起訴したが、表彰状が偽造されたとすれば、9月7日当日ではなかった可能性があるという点もこの日の放送では扱った。このこともまた、市民らが粘り強く指摘してきた事実だ。
この日の聴聞会の終了時間を控え、韓国党の議員らが「夫人が起訴されたら辞退するのか」とチョ長官を追い詰めたシーンはまだ鮮やかだ。
それこそ検察と韓国党が示し合わせない限り、どうやってこんな場面が演出できたのかということだ。
チョ長官を打ちのめそうとする検察の無理な起訴と見なければならない。この日の放送では、検察が実に11時間もかけてほこりを叩くように繰り広げた自宅の家宅捜索も「起訴後の家宅捜索である故に違法」と指摘した。
ユン・ソクヨル検察総長は、チョ長官の指名前から複数の経路を通じてチョ・グク長官の任命を防ごうとしたという痕跡が現れている。
一方では、ユン総長が自分の建議を受け入れなかった文大統領に対する「負けん気」であり「突き上げ」次元で無理な捜査を推し進めてきたとも評価されている。
一理ある指摘だ。ここにメディアと韓国党が一緒に剣舞を舞った合作品が、現在のチョ・グク長官の捜査状況という話だ。
知る人ぞ知る事実が一つ二つと明らかになるや、昨日のような『PD手帳』を見てますます憤怒しているのかは分からない。
検察が通常の捜査によってチョ・グク長官の客観的な犯罪容疑を証明するのなら、これに対して文句を言う市民はそれほど多いとは思えない。ただし「通常の捜査」によってという話だ。
検察とメディア、韓国党のすべてが今、理性を取り戻し、もとの位置に戻る時間が迫ってきているようだ。出口戦略を探すことを願う。
ナム・ギチャン記者 nkc1@ifocus.kr
記事出典:focus daily