イ・ジョングク記者 jungkook@sbs.co.kr 作成 2019.10.29 07:33
日本の戦後賠償責任問題に詳しい川上詩朗弁護士は、徴用被害者に対する韓国最高裁の賠償判決が国際法違反だとする日本政府の主張が「誤解を誘発している」と指摘しました。
最高裁の徴用被害者賠償判決1周年を前にした27日、川上弁護士は、1965年の日韓請求権協定では「個人の賠償請求権を消滅させる合意はされなかった」とし、日本政府の最近の対応を批判しました。
彼は「もしも日韓請求権協定で徴用工(徴用被害者)の慰謝料請求権を法的に消滅させる約束をしたのに最高裁判決が請求権を認めたのであれば、協定違反という論理が成立し得る」と仮定して述べました。
川上弁護士は「両国が合意に至らず未解決の状態で残っていたものを、韓国最高裁が認めたもの」とし「(個人請求権を消滅させるとは)合意していないため、約束を破ったという批判は成立しない」と強調しました。
日本政府は、1991年8月27日に当時外務省の条約局長であった柳井俊二局長が参院予算委員会で「日韓請求権協定で放棄したのは外交保護権であり、個人の請求権を消滅させたものではない」という趣旨を表明したずっと以前から、個人請求権は残っているとの立場を取っていた、と川上弁護士は説明しました。
原爆被害者が損害賠償を要求して1955年、日本政府を相手に提起した訴訟に対応した当時、日本政府は、個人請求権は消滅していないという論理を持ち出したというのです。
川上弁護士は「原爆被害者が、米国に対する損害賠償請求権がサンフランシスコ講和条約の請求権放棄条項によって消滅したという認識を前提に、日本政府に補償を要求すると、日本政府は、“消滅したのは外交的な保護権であり、米国に対する個人の賠償請求権は消滅していない”と回答した」と述べました。
日本政府は、サンフランシスコ講和条約にある日韓請求権協定と同様の内容(請求権放棄)について、日韓請求権協定以前から自国民に対し、個人請求権は消滅したわけではないという立場を表明していたという説明です。
川上弁護士は、日韓請求権協定で個人請求権が消滅しており、徴用被害者の賠償は韓国政府が責任を負うべきだという安倍晋三内閣の主張通りなら、原爆を投下したアメリカではなく、米国とサンフランシスコ講和条約を結んだ日本政府が、自国の被爆者に賠償しなければならないという論理も成立すると皮肉りました。
彼は、中国人の強制労働被害者が日本の西松建設を相手に先に提起した訴訟で日本の最高裁判所(大法院と憲法裁判所を合わせた機関)が下した判決に照らしてみると、韓国と日本の司法府のどちらも個人請求権が残っているという判断を下したものであり、これを裁判で認めるかどうかに関して意見が違っていただけだと分析しました。
川上弁護士は「日本の最高裁判決は、司法の場で個人請求権を認めなかったが、韓国の最高裁判決は認めたという点で違いがある」とし「それでも、日本企業が任意の措置として被害者にお金を支払うことには支障がない」と説明しました。
実際に最高裁判所は2007年4月27日、中国人被害者の賠償請求を棄却する判決を確定しましたが、日中共同宣言(1972年)に規定された請求権放棄が「請求権を実質的に消滅させることまでを意味するものではなく、その請求権に基づいて裁判上、訴を要求する権能を失わせることに留めたものと解釈するのが適当である」と判示しました。
あわせて、サンフランシスコ講和条約が日本企業の任意かつ自発的な対応に支障を与えるものではないとし「被害者の被害救済のために努力することが期待される」と勧告しました。
以後、西松建設は基金を設立し、個人補償を行い、被害者と和解しており、他の日本企業も中国人被害者との和解措置に乗り出しました。
川上弁護士は、中国人に対する措置と比較すると、最近、日本側が韓国人徴用被害者に見せる態度は「矛盾していて一貫性がない」と評価しました。
彼は、徴用被害者と日本企業との間の訴訟では第三者に該当する日本政府が、国際法違反だと主張し、日本企業が判決に承服しにくい雰囲気を作ることについて「実質的には結局、圧力を加える感じ」と言及しました。
川上弁護士は、歴史的な脈絡を考えると日本政府が謝罪すべきだが、安倍政権下で現実的にこれを期待するのが難しいなら、企業が問題を解決するのを妨げないで欲しい、と付け加えました。
1958年生まれの川上弁護士は、北海道出身で、立教大学法学部を卒業しました。
他の仕事をした後、1996年に遅れて弁護士になった彼は、初年度から中国人に対する戦後補償問題を扱う日本国内の裁判に長く関与しました。
大韓弁護士協会と日本弁護士協会が2010年に日韓の歴史問題に関する共同調査・研究を始めたのをきっかけに、日韓の歴史問題について意見を述べています。
彼は、日本弁護士協会の憲法問題対策本部事務局長として、安倍政権の安保法制整備ならびに改憲試図に対する監視態勢を強化しており、日本弁護士協会の人権擁護委員会副委員長も務めています。
(写真=聯合ニュース)
記事出典:SBSニュース