オーマイニュース 入力2019.10.30 18:10
”わたしがこの手紙を書いた理由は、強制徴用事件が絶対におじいさんのせいではないことをお伝えしたいからです。日本が韓国の人々とおじいさんを強制的に連れて行って労働させたのは、今考えても本当に胸が痛く、腹が立ちます。ところがそれ(日本の貿易規制で韓国が被害を受けていること)をすべておじいさんのせいだというのはもっと悲しいです。”
「強制動員問題解決と対日過去清算のための共同行動」のチョン・ウンジュ幹事が仁川桃林小学校5年生のパク・ジュウンさんの手紙を読み上げた。
イ・チュンシク(95)さんの目頭が赤くなった。彼は涙をぐっとこらえた。手紙は続いた。
”あの若さで何も知らずに連れて行かれただけでも悲しいはずなのに、日本ではなくおじいさんがその責任を感じているというのは胸が痛いです。だからおじいさんはただ、日本がくれる被害補償1億だけを受け取って幸せにならなくてはいけません!これまで大きな苦難を経験した分、十分に幸せになる価値があります。だからおじいさん、もうこれ以上自分を責めないで幸せになってください!”
手紙の朗読が終わりもしないうちに、イ・チュンシクさんの涙はあふれた。両手で涙を拭いた。彼は、感想を尋ねる司会者の言葉に何度も遠慮した末、やっと話し始めた。
「すべてが有難いです。1年が過ぎたが、国民がこのように私を助けてくれて有難うございます。言いたいことはたくさんあるが、喉が詰まって言えそうにありません。申し訳ありません。これで終わります。」
30日午後、ソウル市瑞草区にある「民主社会のための弁護士の会」(民弁)の大会議室で「強制動員被害者の人権被害回復を要求する記者会見」が開かれた。この日は、昨年10月に最高裁が日本植民地時代における強制徴用被害者の損害賠償訴訟でイ・チュンシクさんをはじめとする被害者4人に軍配を上げてからちょうど1年になる日だ。イさんは被害者4人の中で唯一の生存者だ。
全羅南道羅州(ナジュ)市出身のイ・チュンシクさんは、高校に通っていた1943年に日本製鉄釜石製鉄所に動員され、重労働に追われ、1945年には日本軍に徴兵され、神戸の一部隊で米軍捕虜監視員として働いた。太平洋戦争が終わって韓国が解放を迎えた後、釜石製鉄所を訪ねて、もらえなかった賃金を支払ってくれるよう要求したが、一銭も受け取れずに帰国した。
この日の記者会見には、勤労挺身隊被害者のヤン・クムドクさん(90)も参加した。ヤンさんは小学校6年生だった1944年、日本で勉強させてくれるという日本人校長の言葉にだまされ、日本に行くことを選んだ。しかしヤンさんは名古屋にある三菱重工業の工場で賃金をもらえないまま働かなければならなかった。最高裁は昨年11月、ヤン・クムドクさんなどが三菱重工業を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で被害者に軍配を上げた。
ヤンさんは「お腹が空いて仕事が出来なかった。(中略)力がなければ仕事が出来ないでしょ。ご飯を2さじ掬って食べればご飯がなく、食堂に行って掃除するとご飯をくれたの。韓国人を動物扱いし、そのことを考えるとくやしくて歯ぎしりします」と述べた。ヤンさんは安倍晋三首相に向かって「安倍首相が必ず私たちの前にひざまずいて謝罪するよう祈願します」と強調した。
イ・チュンシクさんとヤン・クムドクさんは記者会見に出席する直前、国連人権理事会に電子メールで陳情書を送ったりもした。
この日の記者会見を主催した“民弁”と“共同行動”は、記者会見文で「被害者の人権回復のための戦いは終わらない」と強調した。
これらの団体は「安倍政権は韓国司法府の判決を尊重して謝罪、反省するどころか、”国際法違反”云々と言って司法権を侵害する発言をはばからず、被告企業に露骨に圧力を加えて判決の履行を妨害している。あわせて日本政府は、韓国に対する経済規制と露骨な排外主義を扇動し、日本社会全体を”嫌韓の狂風”に追い込む先頭に立っている」と指摘した。
また、「日本製鉄、三菱、不二越は、判決に従って加害責任を認めて謝罪し、賠償のために真っ先に取り組まなければならないにもかかわらず、対話さえ拒否したまま、日本政府の後ろに隠れ、1年が過ぎても何の努力もしていない。私たちは、グローバル企業を自任する企業の卑怯な所行を強く糾弾し、被告である加害企業の責任を最後まで問うことを表明する」と述べた。
これらの団体は、韓国政府に向けても、「韓国政府は、強制動員被害の真相を究明するために韓国内で出来る措置を先制的にとり、訴訟の当事者のみならず、軍人・軍属被害者など訴訟を提起できずにいる強制動員被害者らに対する賠償を含む、強制動員問題の包括的解決のために苦悩しなければならない」と強調した。
ソン・デシク記者(justgoworld@gmail.com)、ユ・ソンホ記者(hoyah35@hanmail.net)
記事出典:オーマイニュース